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第6回クオリアAGORA 2014/当事者主権~自分のことは自分が決める~/日時:平成26年11月27日(木)18:00~21:00/場所:京都大学楽友会館会議場-食堂/スピーチ:上野千鶴子(社会学者 立命館大学特別招聘教授 東京大学名誉教授)/【スピーチの概要】歴史上経験したことのない超高齢社会を迎えた日本、一方で家族のカタチが変化している今、安心して老い、人生の最終章をどのように生きるかが問われています。 第6回は、高齢者の介護問題は勿論、憲法問題にも踏み込んで、私達が直面している課題に対して問題提起を続けているジェンダー研究の第1人者、上野千鶴子さんを迎え、自分のことは自分が決める、言い換えれば「当事者主権」の社会をどうつくるかを考えます。 /【略歴】上野千鶴子(社会学者 立命館大学先端総合学術研究科特別招聘教授 東京大学名誉教授)1948年富山県生まれ。 77年京都大学大学院社会学博士課程修了。 平安女学院大学助教授、京都精華大学教授などを経て95年~2011年 東京大学大学院教授。 ウィメンズ アクション ネットワーク(WAN)理事長を務める。 2012年度朝日賞受賞。 著書「近代家族の成立と終焉」(サントリー学芸賞受賞)「家父長制と資本制」「スカートの下の劇場」「おひとりさまの老後」「ケアの社会学」ほか多数。 




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長谷川 和子(京都クオリア研究所)


この楽友会館は、いろんな方たちが交流を続けてきた歴史的な場所なんですが、今回は、社会学者の上野千鶴子さんをお迎えすることになりました。 多分、上野さんもいろんな思い出が詰まった楽友会館ではないかと存じますが、今回も、過去を懐かしみ振り返るのではなく、前を向いた議論をしていきたいと思います。 今回のテーマは「当事者主権~自分のことは自分で決める」です。 上野さんは、女性学をずっと牽引されてきた研究者であり、社会学者として、今は、お年寄り、高齢社会の問題、憲法の問題と多岐にわたって発言されております。 


きょうは、議会制民主主義をこれからどのように有意義に使っていくのか、この辺りまで踏み込んでスピーチしていただけるものと確信しております。 「自分のことは自分が決める」-私たちは、そういうことをしてきたのかなあと、私自身も反省しながら、上野さんのスピーチをお聞きしたいと思っております。 では、上野さんよろしくお願いいたします。 




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スピーチ 「当事者主権 ~自分のことは自分が決める~」

≪上野氏 資料ダウンロード (4.40MB)≫


社会学者 立命館大学特別招聘教授 東京大学名誉教授 上野千鶴子氏

社会学者 立命館大学特別招聘教授 東京大学名誉教授
上野 千鶴子氏


たった今、見ていただいた動画は、「市民派議員になるための本」の刊行記念のシンポジウムの様子で、私が認定理事長を務めるNPO法人「ウィメンズアクションネットワーク」のサイトにのせております。 最近は、こういうハイテクなこともやっております。 


きょうは、お招きいただいて、ほんとに有り難うございます。 昔、大学院生だったころ、「入院生活」って言うんですが、向上心と向学心のかけらもなく「モラトリアム入院」をしていたころ、ここで、「近衛ロンド」という非常に学際的な集まりがありまして、そこが僅かな楽しみの一つでございました。 その時と、この会場、まるっきり何も変わっていないんですね。 そういう場所に、自分がスピーカーになって招いていただけるとは思ってもおりませんでした。 その上、院生のころ一緒に遊んでいた仲間のおひとりだった山極さんが、総長におなりになる時代が来て、私の方は定年退職を迎える年齢になりました。 今日はお若い方がたくさんいらっしゃるかと思っておりましたら、意外とおじさま、おばさまが多いようなんですけれども、異世代交流ができればいいと思っております。 


きょうは、テーマを何にしようかと迷いました。 私は、ジェンダーから老後、最近は憲法の話までいろいろやってるのですが、きょうのお題は、長谷川さんから、突然降ってまいりました。 これでいけ、と。 それで、覚悟を決めまして、というのは、冒頭に紹介した本が私の一番新しい仕事です。 著者ではありませんが、プロデューサーとして、著者に書いていただき、私が序文を書きました。 これから、この「当事者主権」から、「選憲論」をたどって、「市民派議員」にいくまでの話を30分でサクサクやろうと思います。 


私は中西正司さんと共著の本で、「当事者主権」っていう言葉を作りました。 最近、国際障害者運動の中で流通している標語が「Nothig about us without us」というものです。 この標語は「私たちについて 私たち抜きで決めないで」ということですが、これを、先日、県知事選直前の沖縄で開かれた講演会で紹介したら、大受けに受けました。 「沖縄の運命を沖縄抜きで決めないでくれ」って。 わざわざ「当事者主権」といわなければならない理由とは、沖縄県民を含めて社会的弱者と言われる人々が、当事者能力を奪われてきたからです。 


「当事者主権」という本の共著者、中西正司さんは、中途障害の車椅子生活者で、長年にわたって日本の障害者自立生活運動を牽引してきたリーダーです。 この方とお互いに意気投合して作りました。 当事者主権というのは、とても強い言葉です。 主権というのは、自分の運命を決める、他人に譲渡することのできない至高の権利という意味です。 それは、これまで自己決定権を奪われてきた社会的弱者だからこそ必要な概念だと考えて作りました。 新造語ですから広辞苑には載っておりませんが、いずれ載るだろうと確信しております。 


こういうことをわざわざいわなくてはならないのは、社会的弱者が自分の権利の主人公になってこなかった歴史があるからです。 当事者主権の敵は何かというと、「あなたのことはあなた以上に私が一番よく知っている。 だから任せなさい」っていう態度です。 「当事者である」ということと、自らのニーズの主人公になるという意味の「当事者になる」ということとは、違います。 


障害者運動と比べると、日本には高齢者運動というものがありません。 例えば、アメリカのような会員3千万人を擁する「全米退職者連盟」のような運動体がありません。 それは、権利主張の意識が日本の高齢者に極めて少ないからだと思います。 その理由は、後期高齢者の世代の日本人、しかも、要介護者の中で女性の比率が圧倒的に高く、世代とジェンダーからいって、そもそも、権利主張なぞしない人々でしたから、これまでは介護される側の沈黙がありました。 ところが、介護する側も、いっこうに相手の言い分を聞こうとしてきませんでした。 それだけではなく、研究者も、要介護者の声を聞くというめんどうくさいことはやってこなかったのです。 


私は、編集委員のひとりとして、岩波シリーズでこういう6巻本「ケア その思想と実践」を刊行しました。 これを編集した時の私の悲願は、『ケアすること』と『ケアされること』を同じ比重で論じたい、ということでした。 というのは、ケアすることについては、介護保険以降、おびただしい経験とノウハウの蓄積がありますが、ケアされることについては、不釣り合いに少ないということに気がついたからです。 書き手を探したんですが、見つかったのは、ほとんど障害者ばかり。 高齢者で書いていただける人はほとんど見つかりませんでした。 今から思えば、免疫学者の多田富雄さんに書いていただければよかった、と思いますね。 最近つくづく思っておりますことの一つは、知識人とか研究者とかいわれる方たちが、ボケたり、あるいは体が不自由になられたりしたら、公的生活から引退なさることが多いんですけれども、多田富雄さんがご立派だったのは脳梗塞で倒れられてから、顔面片麻痺状態でよだれを垂らしながら、それでも公共の場に出て活躍なさったことです。 しかもリハビリ期間の短縮に反対するという全国署名をおやりになりました。 言論活動をやってきた方たちは、ボケても、後遺障害が残っても、世間に身を晒して発言し続ける責任があるんじゃないか、最後まで、公共的な存在であっていただければと思うんですが。 


『おひとりさまの老後』がベストセラーになりまして、私の「客層」が変わりました。 上野が「札付きのフェミニスト」であることを知らない善男善女がたくさん読者になってくださいました。 「おひとりさまの老後」は、女性のために書きましたので、男性版はないのかといわれて、書きました。 その「男おひとりさま道」は、そこそこ売れました。 その後、順調に加齢しておりますもので、最近ついにここ、「上野千鶴子が聞く、小笠原先生、ひとりで家で死ねますか」まで来ました。 目下、私が、準備中の本のタイトルは決まっております。 ずばり、「おひとりさまの最期」っていうんですけれど、順調に加齢して死も近くなってきております。 これから先、家族介護力を当てにできない私のような人たちが多くなるということを前提に、介護保険をおひとりさま仕様にしてほしい、と思っています。 


究極の当事者主権というのは、自分の運命を自分で決める権利のことです。 それは、これまで社会的弱者といわれる人々には保障されてこなかったんですが、とはいえ、主権の概念は、国民主権というところからきているわけですから、当事者主権のもともとの意味は、自己統治ということです。 それなら、この自己統治が実際に行われているかどうかっていうことを、考えてみようと。 


「3・11」の後、「日本が変わる・女が変える」という本を出しました。 12人の女性の方と対談した本です。 なぜこういう本を出したかというと、「3・11」の後、「日本、このまんまじゃいけない。 変わらなくっちゃ」と、思った方たちがたくさんいらっしゃる。 その時、誰が変えるかといったら、「もう、男に任せておけない、女が変えよう」というので、威勢よく、こういうタイトルにしたんです。 でも、この対談シリーズの最中に、政権交代してしまって、その後、過去に政界復帰がありえないような形で投げ出して消えた政治家が、もう一度、政権トップに返り咲いたので、私は、今の内閣のことを「安倍ゾンビ復活内閣」、あるいは「原発再稼働戦犯内閣」とも呼んでおります。 対談相手に選んだ方たちの中で、一番最初に話したいと思った方は、高村薫さん、関西在住の作家です。 


なぜかっていうと、実は、この方、1992年に「神の火」という小説を書いておられます。 この小説は、原発テロができる。 しかも、ひとりでもできる、という恐ろしいことをテーマにした本なんですが、こんなことをよくも考えついたなあと思って高村さんにお会いしに行って、何でこんなことを思いついたんですかと、お聞きしました。 すると、あの方は、関西の方ですから、毎夏、海水浴は、水のきれいな日本海に行く。 すると、向かい側に高浜原発が見える。 その時こう思ったんだそうです。 「陸路は厳重に封鎖されていてアクセスは難しいが、海側はスカスカ。 これなら、自分にもできる」-。 すごいですね。 確かに、日本は、テロも予期しない無防備体制で原発をやってきたわけですけれど。 


12人の女性たちとお話をすると、年配の方たちほど、特に、日本の敗戦を知っている方たちほど、日本の将来に悲観的だっていうことがわかりました。 私は、「3・11」の後で読んだ本の中で、一番参考になったのが、経営学者の野中郁次郎さんたちの共著「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」という本です。 ここに何が書いてあるかというと、「日本軍は平時に強く、非常時に弱い組織だった」って書いてあるんです。 軍隊が、非常時に弱くてどうしますか。 もっと恐ろしいことが書いてあって「日本軍のこの組織論的な体質は、戦後、多くの大企業に引き継がれた」と書いてある。 ということは、負けることがわかっていたあの敗戦に頭から突っ込んでいくのを「やめられない、止まらない」というあの日本軍の体質が、戦後そのまま残っているということです。 石牟礼道子さんにお会いした時に、最初におっしゃったのは「福島は水俣のようになるでしょう」という恐ろしい予言でしたし、澤地久枝さんは「このままでは、第二、第三の福島が起きるでしょう」とおっしゃる。 その予言には、根拠があります。 なぜかというと、原子力村も東電も政府も何一つ変わっていないからです。 


それでも、原発立地自治体の中で、日本には、原発は54基、立地自治体は16あるんですが、計画自治体が23あるので、引き算したら、押し返した自治体が七つあります。 例えば、「なぜ紀伊半島には原発が1基もないのか」という記録が出ています。 山秋真という上野ゼミの出身者が、「原発の代理戦争にゆれた能登半島・珠洲市民の13年」をめぐる本を書きました。 彼女から相談を受けて一緒に考えたタイトルはズバリ、「試された地方自治」。 つまり、原発を受け入れるか受け入れないかというのは、実は、地方自治の問題なんだという考え方です。 


日本の女は、戦前は主権者ではありませんでしたから、敗戦には責任がないといっていいんですけれども、戦後は、女も有権者になりました。 ところが、政治学者たちの共通の見解は、戦後、女性参政権は政治を変えてこなかったというのが、投票行動の分析からの結論です。 しかも、女性票は戦後長きにわたる保守一党支配を支えてきたといいます。 なぜかというと、女性票は家族票の一部として動いてきたからです。 女性票が家族票から離れて個人票として独自に動いたのは、戦後史上初めて1989年の「マドンナ選挙」の時だったといわれています。 それ以降、女性票と若者票は浮動票として先の読めない票になりました。 婦選運動に一生を捧げられた市川房枝さんは、選挙権を獲得した後も日本の政治が変わらないことを見て、無念の思いで「権利の上に眠るな」という言葉を残していらっしゃいます。 


その後、日本の女の地位がどう変わったかというと、このところ、新聞報道でいわれております通り、先進工業諸国のなかでは惨憺たるもので、しかも毎年順位が下がっています。 


ちょうど2年前、野田首相の解散総選挙の際に、当時あった14政党に対して、「ジェンダー平等政策全政党アンケート」を、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)を含む24団体で実施し、その結果をウェブサイト(http://p-wan.jp/wp/p-wan/)上に出しました。 26項目のリストからなっていますが、独自に二つ付け加えたことがあります。 一つは不戦、すなわち「憲法9条を守るか」、もう一つは非核、すなわち「原発を廃止し、非核三原則を維持するか」という問いでした。 26項目のすべてに満額回答をくれるとチャートが塗りつぶされることになるんですが、満額回答をくれたのは、社民党、緑の党といった超弱小政党だけでした。 


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図でいうと、(資料)当時の政権政党の民主党と、現政権政党の自民党を比べると、チャートのスカスカ度がわかります。 これが、どれだけ女性政策に冷淡かという指標です。 最近、安部政権が、「202030」(2020年までにあるゆる分野における指導的な地位の女性の割合を30%までに増やす)を唱えていますが、「202030」に対しては自民党も満額回答です。 何故かというと、女は、日本に残された最後の資源、寝た子をたたき起こしても使いたい資源だからです。 ですから、「202030」は支持しています。 ですが、女を活用する気は満々でも、女性の権利を守る気はないということが、実によくわかるデータが、こうやって上がってきました。 今でもWANサイトにアクセスしていただければ見ることができますので、ご覧いただければと思います。 政党の政策は2年ぐらいで、急に変わったりはしませんから。 


アンケートの結果を分析すると、「不戦と非核に消極的な政党は男女平等にも消極的」であり、反対に「不戦と非核に積極的な政党は、男女平等にも積極的」という傾向が見てとれます。 それに、ネオリベ政党と保守政党の違いは、配偶者控除の廃止をするかどうか。 それから、女性の活用に熱心な政党が、女性の権利の擁護に熱心だとは限らない、というふうなことがわかりました。 


民主主義というのは、自己統治の技のことですが、その自分が自分の統治者になる、つまり主権者になるということが、ほんとにできているかどうかっていうことを考えてみたい。 私たちが今採用している民主主義は、「代議制民主主義」というものですが、これは、あまたある民主主義の、一つの、しかも限界のある、種類に過ぎません。 先ほど見ていただいた『市民派議員になるための本』刊行記念のシンポに登場していただいた二人の若い政治学者、一人は東京大学の宇野重規くんで、もう一人が麗澤大学の山崎望くんですが、彼に教えてもらった代議制民主主義の、これ以上なくわかりやすい、腑に落ちる定義があります。 すなわち、「代議制民主主義とは、投票によって意思決定権を代表に託すことで、エリート政治の一種であり、エリート政治であることで背後には衆愚への警戒心があり、政治参加を4年に1回の投票に限定することで、市民の政治参加を促進するよりは抑制する意思決定のシステム」。 なるほどなあ、これだと選挙にいく気がしないのは、そりゃそうだろうという気がしてきます。 この中にある考え方は、「愚民民主主義観」です。 この愚民観は、投票日に雨が降ってくれればいいとか、若者が寝ててくれればいいとかいった元宰相と同じく、良識派にも分かち持たれています。 「3・11」の直後に、「原発再稼働 是か非か」を巡って、都民投票をやろう、という提案がありました。 東京都は東電の大株主の一人ですから、それをやろうと声をあげた人たちに対して、良識派といわれる人たちが反対しました。 憲法改正にも裏口入学のような96条改憲案案が登場し、またその流れの中に、国民投票の年齢を18歳に引き下げるという法案が成立してしまいました。 これも、憲法改正のハードルを下げて、メディアとか風に流されやすい人たちを一気に改憲の方向へのせてしまおうという、愚民民主主義観が背後にあるようです。 


私は、「上野千鶴子の選憲論」を出しました。 改憲派は非常に元気がいいのに、護憲派の方は反対と唱えるだけで何にもしない。 何にもしないのが一番だといっていると対抗策が出せない。 改正のための国民投票も何もしない方がいいというふうなことをいうと対案が出せない、といった隘路に追い詰められているところに、「選憲」という第三の道を提案したものがこれです。 


こういう流れの中で、そんならいっそのこと、何も自民党だけに憲法の改正案を出させるんじゃなくて、主権者として思い思いに、どんな憲法がほしいのか考えてみようじゃないかと、キャンペーンをやったのが、大塚英志くんです。 中央公論で募集をやりましたら、10代から70代まで応募作があって、(資料)今画面で紹介しているのがその優秀賞、今から12年前に17歳だった女子高生の「憲法前文」です。 何故、これが優秀賞になったかというと、理由はとても簡単です。 私が選考委員だったからです。 


**このところ、民意と選挙の結果が、どうも一致しない、昨年あった日弁連主催の「10・8デモ」(資料)に、上野も参加しましたが、日弁連の会長は「日弁連は、設立後もっとも燃えています」といってました。 日弁連には、自民党の代議士から共産党員までいるので、こういうことをやると、会員弁護士から「思想信条の自由を侵された」といって告訴されることがあるそうで、告訴されるリスクを犯してまでこういうことをやってるとおっしゃっていました。 



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小熊英二くんにズバリ、「原発を止める人々」というとしたタイトルの本があります。 現在、日本は54基の原発が全部止まっています。 原発なしで、節電せずに夏も冬も越せています。 われわれは、今、すでに目標を達成しているんだということに自信を持っていいんだと彼はいいます。 この本の中で、彼は官邸前脱原発デモの参加者からさまざまな声を拾っています。 2012年の総選挙で、政権交代がひっくり返って、私はショックを受けましたが、こういうことをいってる人がいます。 「選挙の結果にもがっかりしなかった。 こういう積み重ねで日本はきているんだから、がっかりする暇なんかないぞ」と。 


自分が、座視していたために時代の変化を、いつの間にか後戻りできないような最悪の事態まで持って行ってしまった。 だから手遅れにならないうちに動かなければならない、という人たちの声が、本書には登場します。 「破局への道は善意で敷き詰められている」ともいわれていますが、「局所最適」、つまり個々人が自分の任務に最大限誠実であることが、結果として、破局に導くこともあるわけです。 


冒頭に紹介した「市民派議員になるための本」に戻りましょう。 この本には、旧版があります。 今から12年前に出しました。 翌年春に統一地方選があったんですが、「私は、この本を読んで議員になりました」というお礼状が、全国各地から著者に届きました。 この12年の間に、地方自治法が改正され、それから、公職選挙法も改正されてネット選挙が解禁されましたので、12年ぶりに最新版を書いてもらいました。 刊行記念シンポに登壇してもらったもう一人の若者は、高橋茂くんといってネット選挙解禁論者、「ザ選挙」というサイトを主宰している活動家です。 


この12月に総選挙が近々行われますが、「アベノミクス解散」とか呼ばれています。 消費税が争点だといわれていますが、今、消費増税を先送りすればいったい何が起きるかというと、最近出たばかりの社会学者の橋爪大三郎さんとエコノミストの小林慶一郎さんの共著、「ジャパン・クライシス ハイパー・インフレがこの国を滅ぼす」によると、このままだと信用不安が起きてハイパー・インフレで高齢者の資産がチャラになる、と。 その分国の借金は目減りするかもしれないが、その代わり、日本の経済は信用が下落し、その上貿易赤字が加わって消費者物価も上がってろくなことはない。 しかも、消費増税は今のところ、福祉目的に使われることになっていますから、新しい政策、例えば、子育て支援なぞという新分野が、すべて凍結してしまいます。 原資がないからです。 結果は、いっそうの少子化の進行になるでしょう。 この借金は、すべて、将来世代のつけになる-こういうことが書かれています。 この本の中で、小林さんは、消費増税をした分の税金は再分配の資源になるので、必ず国民に返ってくる。 しかし、ハイパー・インフレになったら、国民の資産も収入も大打撃を受ける。 どちらがいいのか。 それを避けるためのシナリオとして、財政健全化を果たすためには、「消費税35%、この先50年間」、というシナリオを出しておられます。 すさまじいシナリオですが、そのぐらい危機が深いということをおっしゃっています。 



こういう現実にもかかわらず、選挙民はどういう行動をしているかというと、最近の総選挙の得票率と議席占有率のデータ(資料)をお示しすると、小選挙区制の影響でそのあいだに極端なアンバランスが起きています。 最新情報ですが、「土井たか子さんを送る会」に河野洋平さんが出てきて、痛恨の思いで、「小選挙区制をあの時成立させたのは、自分の政治生活上の失敗だった」と反省の弁を述べられたそうです。 小選挙区制は、わずかな得票が、巨大な議席占有率につながります。 自民党の得票率だけ見ると、意外と高くないのに多数議席を獲得しています。 次の図を見ていただきたいのですが、(資料)小選挙区でこれだけ、比例でこれだけ、死票率が5割以上あります。 これを民意というならば、これだけの人たちが、自民党を支持していないにもかかわらず、8割使い議席占有率が生まれていることがわかります。 



次に、年齢別投票率を見ていただくと(資料)、投票率は年齢とともに上がっていて、一番高いのが65歳から69歳。 私の世代です。 ここが、投票率マックスで、8割近い。 全年齢平均が6割で、一番低いのは20代前半です。 20代はこんなに低い。 女より男がもっと低いですね。 区、市、町、村を比較すると、市部が一番低い。 こういう中で、「20代、いったい何をやってるのだ。 自分たちに将来ツケが回ってくるような困った政策を、座視していいのか、上の世代ににいいようにやられっぱなしになっていいのか」ということになるんですが、じゃあ、20代、寝た子を起こして選挙にきてもらうと、何が起きるのか?という問いが経ちます。 



最近、私たちは恐ろしい経験をしました。 (資料)この図は、この前あった東京都知事選の投票先割合です。 20代の投票率は低いですが、その投票先割合の中で、驚くべきことに、20代投票者の5人に一人が、あの日本の最右翼の一人、田母神候補に投票していることがわかりました。 寝た子を起こしたら、その結果どうなるかということが、ここにあらわれています。 


時間も参りましたので、この後、ご討議をされるということですので、私の方から、課題を投げかけさせていただきます。 一つは「若者に投票にいってもらうにはどうしたらいいか」。 代議制民主主義とは、有権者を萎えさせるような制度だとお話しましたけれど、それでも、寝た子を起こしていってもらうにはどうすればいいか。 「あんたたちの将来の運命がかかっているんだから」っていって、投票率をあげるにはどうすればいいか、ということを考えていただきたい。 もう一つは、「もし、投票率が上がったら、結果はどうなるのか」です。 もしかしたら、もっとまずいことが起きるかもしれない、ということもありますので。 別ないい方をすると、この問い二つは、みなさん方が「愚民民主主義観」に立つかどうか、という問いと同じです。 



ついでにもう一つ言っておくなら、最初にお見せしたスライドの中で、「なぜ、女性の政治家は増えないか」という問いがありました。 これについては、答えは出ています。 女性は、選挙権は行使しているが、被選挙権を行使していない。 圧倒的に、被選挙権の行使の度合いが低い、と。 つまり、女の候補者がいない。 候補者がいないと選択肢ができないので、投票先にならないわけです。 これも、面白いデータがありまして(資料)、当選確率のデータを見ますと、女性候補者の方が男性候補者よりやや高いことがわかっておりますので、立候補すれば、当選する確率は高い。 で、女性の場合には、当選するかどうかよりも、立候補の壁のほうがもっと厚いということがわかります。 だとしたら、女性の被選挙権行使、つまり、候補者を増やすにはどうすればいいかも考えていただきたいと思います。 


時間も参りましたので、このへんで、私の話はいったん締めさせていただきます。 聞いていただきまして、ありがとうございました。 





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