2009年1月アーカイブ

 私が仕事を始めて早々の頃、アメリカのある一流の大企業に我が社の製品を売り込みに行ったのですが、会社の規模には関係なく、良い製品であれば驚くぐらい正当に評価してくれるのです。日本とは、決定的にそこが違います。

 日本は保守的というのでしょうか、堀場製作所のような中小企業の製品を、特に企業の中枢に関わるところにはなかなか採用しようとしません。しかし、外国の会社は、その製品が本当によいものであれば、開発した会社がどこであろうが、製品とその技術に対して正当な評価をしてくれます。だから、新しく開発したものはまずアメリカが使ってくれました。

 堀場製作所が海外進出をした昭和30?40年頃といえば、日本企業はまだあめりか詣でをしていた時代でした。そしてアメリカの研究所などを視察して、堀場の製品が使われていたりすると、「この製品はどこのものだ?」「あなたの国、日本の商品ですよ」となると、その人は国に帰って、アメリカで使われていたくらいだからいい製品に違いない、「その堀場とかいう会社の製品を使おうか」ということになるのです。

 日本の会社は、基本的にベンチャー的な意識は低く、どこか大きな会社が使っていたらよろしい、となります。いわば、ブランド志向なのです。採用を決定する人もブランド品を使っておけば、少々高くても、悪くても、その人の失点にはなりません。そこで何かあった場合「堀場の製品です」「堀場ってどこだ?よくぞそんないい加減な会社のものを!」と、その人にバッテンがついてしまいます。

 日本でベンチャーが育たない理由の一つは、購買する側がリスクを背負わないからです。なぜリスクを背負わないかというと、減点方式だからです。

 しかしバブル崩壊後、長期不況に耐えきれず、色々な企業がこの減点方式を取りやめようとしています。そこでみんなが「減点の恐れがあろうとも関係ないよ、好きなことをやるんだ」という働きをすれば、日本のアクティビティが上がるのではないか、と思います。

 減点方式では「パーフェクト」であった人も、加点方式になれば「ゼロのまま」というケースも出てくることになります。

 つまり、「キジも鳴かずば撃たれまい」から、「鳴かないキジは殺される」ということでしょうか。鳴かない鳥は、鳥ではないのです。

 

このアーカイブについて

このページには、2009年1月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2008年11月です。

次のアーカイブは2009年2月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

(株)堀場製作所 社是

  • (株)堀場製作所 社是

著書

最近のブログ記事

  • 堀場雅夫

プロフィール

  • 堀場 雅夫
    大正13年12月1日生まれ

    【学 歴】
    1946年 京都帝国大学 理学部 物理学専攻卒業
    1961年 医学博士号取得

    【職 歴】
    1945年 堀場無線研究所創業
    1953年 株式会社堀場製作所設立 代表取締役社長に就任
    1978年 株式会社堀場製作所 代表取締役会長に就任
    1995年 株式会社堀場製作所 取締役会長に就任
    2005年  株式会社堀場製作所 最高顧問に就任 現在に至る

    【現 職】
    ■財団法人 京都高度技術研究所 最高顧問
    ■京都科学機器協会 理事長
    ■日本新事業支援機関協議会(JANBO) 会長
    ■京都ナノテク事業創成クラスター本部 本部長
    ■独立行政法人 科学技術振興機構 JSTイノベーションプラザ京都 総館長
Counter