護送船団方式から「個」の創造性へ

 戦後、日本の企業が成長し、発展するために、護送船団方式がとられました。同業が集まって、そしてみんな下手な喧嘩をせずに仲良くやっていこうと。そしてそれが最大の利益をもたらすのだ、という考え方でした。もちろん、会社それぞれの競争はありました。

 日本ほど、同業が集まって護送船団方式で動いたところは、世界の中ではないと思います。

 そして、そこに従事する人間も、企業格差を持ち出すことをせずに1つのパターンにいかに上手く入れ込むかということが、経営の基本でした。従って、しっかりしたマニュアルを忠実に実行する人間が求められました。

 そのような時代でしたので、企業としては一流大学を、しかも優秀な成績で出た人を採用しておけば間違いがないと考えられていました。そのような人達は、いわゆる偏差値狂的な成績が良かったから、正しいマニュアルさえ渡せば、忠実に、しかもレベルを高く守ってくれますので、企業としては非常にありがたい人材だったのです。そのような背景から、大学のブランドというのも非常に効いていました。

 今の大学は何のためにあるのでしょう。大学そのものが、もうほとんど目的化されてしまっています。大学へ行くということが、本人の目的になってしまいました。本来、大学というのは、そこでより多くの情報やより深い知識を得て、それをベースに社会への貢献や、自分の能力を発揮し、生きがいを学び、感じるための手段としてあるべきなのに。

目的と手段が、ひっくり返ってしまったのです。

 戦前の日本は平均的に貧乏でしたし、やりたいこともなかなかできませんでした。その中で自分で色々目標を立てて、自己実現のために努力をしてきました。しかし、戦後の日本人は、一つのレールに乗っかってしまったら、それでその人の人生は概ね決まってしまうようになりました。工程表が決まってしまった。個の存在を必要とせず、自ら求めようともしなかった、とも言えるのではないでしょうか。

 しかし、バブルが崩壊して価値観が変化しました。護送船団方式で国際社会に乗り込んできた日本でしたが、今度は個性や創造性が重要視され、人間を幸福にするような生き方が模索される時代が来ました。それに企業が気付き、行政が気付き、そしてやっと働いている親たちも気づいてきました。しかし、ブランド志向がまだ強い親がいることも確かです。

 しかし、一流大学を出ても、「品質保証」はされません。

 幼稚園は有名な小学校にはいるため、小学校は有名な中学校にはいるため、というふうに子どもを育ててしまっていませんか。

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このページは、joy&funが2008年6月18日 11:43に書いたブログ記事です。

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(株)堀場製作所 社是

  • (株)堀場製作所 社是

著書

  • 堀場雅夫

プロフィール

  • 堀場 雅夫
    大正13年12月1日生まれ

    【学 歴】
    1946年 京都帝国大学 理学部 物理学専攻卒業
    1961年 医学博士号取得

    【職 歴】
    1945年 堀場無線研究所創業
    1953年 株式会社堀場製作所設立 代表取締役社長に就任
    1978年 株式会社堀場製作所 代表取締役会長に就任
    1995年 株式会社堀場製作所 取締役会長に就任
    2005年  株式会社堀場製作所 最高顧問に就任 現在に至る

    【現 職】
    ■財団法人 京都高度技術研究所 最高顧問
    ■京都科学機器協会 理事長
    ■日本新事業支援機関協議会(JANBO) 会長
    ■京都ナノテク事業創成クラスター本部 本部長
    ■独立行政法人 科学技術振興機構 JSTイノベーションプラザ京都 総館長
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