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ディスカッサント


堀場製作所最高顧問

堀場 雅夫 氏


同志社大学大学院経済学研究科教授

篠原 総一 氏


佛教大学社会学部教授

高田 公理 氏


京都大学大学院理学研究科科長

山極 寿一 氏






山極 寿一(京都大学大学院理学研究科科長)


3月11日以降、実は、自然科学系研究科では各大学とも協力を行っていたんです。 ただ、それは、震災が、日本の科学技術研究と教育に負の影響をもたらさないようにしようということが主体で、科学者同士が分野を超えて、震災や原発の問題について政策提言しようという段階まで踏み込めなかった。 これに私はずいぶん落胆しました。 原発事故を前に、われわれは、ピラミッドの時代にもどっちゃったんじゃないかと、感じたのです。 まさに原発は現代のピラミッドです。 大きな象徴として、国の経済の中心に座っている。 何十年、100年以上もかけ、大変な労働力を使って作ったピラミッドはとても壊すことなどできず、いまだに残っている。 原発という現在のピラミッド、大きな経済的期待がかかっているからこそ決して壊せないし、放射能のことを考えれば、これから数万年以上も原発の影響は続いていくことになる。 われわれは、こんな大きな期待と負荷を併せ持つピラミッドを抱えて生きていかなければならないんです。 


それに原発に関して、実は科学者が必要とされていない。 科学者は口出しできないのです。 日本という高度に組織化された社会が科学より大きな力を持っていて、せっかくいる専門的な科学者の力は必要とされていない。 科学者は口出しできず、原発の行く末を左右できない。 だから、さきほど山口さんもおっしゃったとおり「ノーマリーオフ」を導入しなければどうしようもない事態になっている。 ピラミッドを抱えてしまった3000年前の民衆と同じような心境というのが、福島の原発事故で受けた私の今の印象です。 



堀場 雅夫(堀場製作所最高顧問)


今の話、ぼくは口出せないっていうのは、口を出す勇気がないだけで、なんぼでも出せると思うなあ。 山極先生も、おかしいと思うんならおかしいというたらええやないですか。 とにかく、京大そのものも社会的責任をとってない。 例えば、京大の先生の肩書きで、原発は悪いもんやと一方的にいいまわってるのがおる。 もし、個人的にいうのならいいけど、あれ、肩書きも使っていて京大がそう思っているということになる。 大学全体の考えでないのなら、大学側も反撃するなり、それは個人的な見解で京大の全ての考えでないと社会に向かっていうなり何か対応するべきで、ほったらかしているのは無責任や。 それにしても、あんな対応をした東電には、技術担当役員はいなかったの、いるんでしょう。 



山口 栄一(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授)


副社長(当時)の武藤栄さんがそうでした。 でも、東電の代表として官邸に来たのはフェローの武黒一郎さんでした。 ずっと原子力畑で、原子力トップとして東電の副社長をした後、国際原子力開発の社長をしている人です。 



堀場


私も技術屋あがりだが、今ある商品が全部わかるかというとそんなわけにはいかない。 それで、技術担当役員に話を聞くんです。 専門外のことでも20分も聞けば大体8合目まではわかって、どんなことか判断できるようになる。 そんな中からいろいろ決定していく、それが社長の役割です。 ですから、その説明をちゃんとする担当役人の仕事はとても大切なんやけど、今回の事故はその辺がどうなっているのかと思うね。 




山口


その辺は事故調で追及すべきでしょうが、誰もやっていないですね。 



高田 公理(佛教大学社会学部教授)


山口さんに教えていただきたいことがひとつあります。 2、3号機は、それぞれ70時間、36時間、低温を維持したようですが、その間に海水を注入したらメルトダウンは起こらなかった。 ただし、海水を入れると、廃炉にせざるをえなくなるんですか。 



山口


はい、そうです。 原子炉を助けるか社会を助けるかという選択ですね。 



高田


なるほど、廃炉にして、新しい原子炉をつくることになれば、ずいぶん金がかかるのでしょうが、しかし他方、大量の放射能漏れが起こると、これまた多額の補償金などが必要になりますね。 この二つの選択肢を比較すれば、どちらが会社にとって損になるのか。 簡単な話やないかと思うのですが……。 「技術経営」という言葉は初めて聞いたのですが、爆発が起こったら、どの程度の放射能が放出されるのかということは、簡単に分かることなのではなかったのですか。 



山口


事故が起き暴走した時、技術屋は、その後なにが起こるかわかっていたと思います。 たとえば、元保安院の院長はさめざめと泣いて、「もう東京は助からない」と言ったと聞いています。 「経営者が意思決定しなかったという過失」についてお話ししたとおり、あの時点で、東電の経営者は「原子炉の物理的限界」というものを理解せず、後で取り戻せると思い、海水注入をしなかった。 原子炉水位がマイナスになれば、人知を超えて暴走し、どうしようもなくなることをエンジニアは知っていたが、経営者は知らなかった(知ろうとしなかった)ということです。 



高田


あほみたいな話だというほかありませんね。 



山口


JR福知山線の事故でも同じことです。 あれは1996年に線路設計の変更をして線路を付け替えた時、事故は必ず起きると「予約」されてしまった。 技術屋は転覆限界速度を計算したはずです。 そして時速120キロで突っ込んでしまったら確率1で転覆することはわかっていたはずです。 だからATSは必ず設置しなければならなかった。 しかしJRの経営者はつけないという意思決定をした。 裁判でJRは「8年前には設計変更による事故は予測できなかった」と主張し裁判官も判決でその主張を全面的に認めましたが、確率1で事故が起きるという物理学は高校生でも計算できること。 経営レベルで技術屋の考えをいれるなどの「知の越境」ができないことで、こんな事故が起こる。 


篠原 総一(同志社大学大学院経済研究科教授)



福島原発の報道を見ていた時、ほんとに「あほみたいなこと」がいっぱいありましたね。 ヘリコプターで原子炉の上から水撒いていたが、原子炉が水辺にあるのは信じられないくらい冷却に水がいるんですね。 私が学生の時、東大の安田講堂を占拠した学生を排除するため、ヘリから水を撒いたことを思い出しましたが、あんな水の量では大した効果もなく、目標にうまくあてるのも大変でした。  だから、震災の時のヘリを見てあんなことで間に合うのかなと素人ながら「あほみたいなこと」と思いましが…。 まあ、わかっていてできないというのは、長く続く不況を救うことができない経済学もまあ、同じで反省しきりです。 



山口


はい、そうですね。 1号機は、実はGEとのフルターンキー契約といい、GEの設計をすべて受け入れなくてはならなかった。 GEの設計では、トロネードを防ぐため非常用電源を全て地下に配置するようになっています。 5、6号機ぐらいからは東芝などの日本のメーカーが設計変更できるようになった。 そこで5,6号機では、一部の非常用電源が1階に置かれかつ空冷式になって、被害を免れた。 さらに女川では15㍍の高さに建設することができた。 これが福島の4号機までと違うところで、被害を免れた。 



篠原


企業は、設備を計画する時、必ずコスト計算をしますね。 でも、プライベートな企業では、何かで他人に与える被害はコスト計算では無視してかかりますよね。 これを無視しないような考えが大事で、公害防止にもつながるんですが、制度化をしとかないといけない。 これができてなかったんですね。 大反省しなければいけないところでしょう。 こんな事故が起こった時は、社会一般的な認識では、コストの方が大きいのは当たり前で、廃炉につながる海水の注入はぼくらも当然と思われるのに、他人の被害がコスト計算に入っていない、東電の当事者はそうは思わなかったんですね。 科学の知識も身につけてこういった制度をきちんとつくっていくことが大事ですね。 



山口


今回の事故が救えなかった原因の一つに、「原子力の制度設計や運用に、社会科学者も加わってオープンな議論をするという風になってなかった」ということが挙げられます。 つまり「原子力村」という閉鎖的共同体の成立のためです。 故正力松太郎氏と中曽根康弘氏が1956年に原子力政策を始めた時、原子力発電はアメリカから直輸入すると決めた。 さらにそのメンテナンスのために、旧7帝大に原子力(原子核)工学科を作った。 そしてその出身者がいまや数万人規模の「原子力村」という共同体を作った。 それはもう、誰も入れない「聖域」になってしまった。 



高田


原子力村の話が出ましたが、ぼくの実感をいうと、「世界遺産化と原発は立地場所周辺の人間を、しばしば駄目にする」という仮説をと思っています。 美浜町を訪れた際、原発立地のおかげで多額の補助金が入ってきた結果、いろんな意味で人々のやる気が見事に削がれてしまったという印象を受けました。 他方、原発のない小浜町では「オバマ勝手連」が生まれたり、「食文化によるまちづくり」を進めたり……実に活気がありました。 いろんな意味で原発は「受苦施設」なんでしょう。 


それにしても、これだけ原発が賛否両論、いろんな意味で話題になっているのに、昨年12月に亡くなられた古川和男さんの提唱しておられた「トリウム溶融塩炉」が、まったく話題にならないのはなぜなんですか。 


さきほど話題にのぼった「ノーマリーオフ原理」ですか、トリウム溶融塩炉には、システムとして、それが組み込まれているような気がするのですが…。  1970年代に西堀栄三郎さんが、「これからの原発はこれや」と言っておられたのを思い出します。 ただ、このシステムは、核爆弾の原料生産に役立たない。 だから、軍事的には無意味なのだそうです。 でも最近はインドや中国では、トリウム溶融塩炉の研究が急速に進んでいるという話を耳にします。 これは、システムそのものがだめなのか、原子力村の利権に合致しないということなのか。 いずれにしろ、福島の事故の後、誰も話題にのせないのが不思議でしかたありません。 



堀場


これからは絶対必要で、ぼくは、トリウムの推進派なんや。 中国が一番進んでいる。 こういういいシステムがあるあるって、わかっている人はみんなでいうたらええんやけど、誰も勇気がないんやなあ。 





司会  ではここで会場からもご意をいただきましょう。



宮野 公樹(京都大学学際融合教育研究推進センター准教授)


「言ってもどうせ変わらない」と思っているからいえない、ということもあるのではないでしょうか。 それと事がおこった後の今、「その時、現場の人はまちがっていた。 愚かだ。 自分はきっと正しいことをする。 」と思っている人がいたらとても危ういと思う。 これは安全な「今」だからいえること。 当時のあの原発事故の現場には、いろんな修羅場にもまれてきた人もいたはず。 つまり、あのような極限状況になったら「もしかしたら自分も変なことしてしまうかもしれない」という感情を持つことが大事だと思う。 そしてこれを前提に考えての制度設計が必要です。 



村田 純一(村田機械会長)


あほな経営者という話が出てますが、二つの問題が指摘されると思うんです。 ひとつは電力会社自身の問題。 戦後の経済発展には努力され大きく貢献されたのですが、30年、40年して独占の弊害が出てきた。 お金があるので、お金をあらゆるところにばら撒きましたね。 何かあっても金で解決する―これで、ガバナンスというか企業としての意思決定がおかしくなっていったんじゃないか。 それと原発の出だしで日本の場合、反対運動は大企業には何でも反対の「左」が主導したので、電力側もこれに対抗して安全一転張りの対応となり、ディスクローズがおろそかになったのではないか。 この日本の「左」体質も、経営者の意思決定をおかしくしてしまった一因ではないかと思うんです。 



塩瀬 隆之(京都大学総合博物館准教授)


今は、犯人探しとは違う形での事故の分析が、こういう事故対策としては必要なのではないか。 今回のことでは、誰が犯人かを追及をするのは止めにしたほうが今後につながると思う。 誰かを悪者にしようとすればするほど言い訳になってしまう。 米国の航空業界でもやっているように、パイロットの責任は問わないという形でまず事故を分析したうえで、誰がやっても、誰が判断しても次に事故が起こらない仕組みを作ろうという考え。 今後の方法としていいのではないかと思います。 



山極


こないだノーベル賞の益川さんに講演をお願いしたら、「科学というものは大きな危険を本質的にはらんでいる。 科学の発展を夢見ながらこの危険に警鐘を鳴らすのが科学者の本分」とおっしゃいました。 今回の事故では、まさに科学者がこの危険性を意思決定システムの中にきちんと織り込む努力を怠ったのではないか。 これは科学者自身の責任でもあるし、政府の責任でもあると思います。 とにかく、科学者がもっときちんと責任を持って意思決定システムの中に入っていかなければならないと思います。 原発事故の時、専門的な見解に基づき誰が意思決定し、発動するのかということが混乱し、危険性を訴えるのが大変遅れたのですが、いまだにそれが解消されていない。 これは大変問題です。 



山口


科学者が意思決定システムに入るというのは大賛成。 これだけ企業の中に大きな技術が入ってくると、意思決定者のなかに科学者がいないと経営が難しい。 テクノロジーオフィサーというよりテクノロジーの根源を問うサイエンスオフィサーの存在が必要だと思いますね。 ヨーロッパの企業では増え始めています。 日本の企業では、専門家は、意志決定の場は控えろみたいな風潮があって、この「知の越境」を避ける風が、福島やJR西日本の福知山線事故のような不幸を招くことになった大きな要因であると思うのです。 



篠原


耐用年数のことが気になりますね。 40年だったものを60年に伸ばしていますね。 これはなぜですか。 伸ばせばもうかる。 そういう考えでいくと、当然廃炉は避けたいう考えにつながりますね。 



山口


西村章先生(東京工業大学原子炉工学研究所特任教授)にインタビューしましたら、部品を変えれば40年を超えても運転できるとおっしゃいました。 ただ、圧力容器の熱サイクルと放射線照射による強度の劣化で耐用年数を60年としているようです。 ここは今でも議論されています。 世界で7番目、日本で一番古い敦賀原発は、2016年まで運転するように伸びました。 ほんとはもう少し早いはずだったんです。 



篠原


このことって、原発以外でもいっぱいある。 オリンピックのころ道路、橋をいっぱいつくった。 米国で80年代、橋が落ちたりしていましたが同じように財源がないところでどんどん寿命が来ている。 ある試算では、この補修に年間8兆円も必要というのですが、社会的インフラのこの現状は、科学は科学、政治は政治といってはいられない重要な検討課題です。 



大野 慧(大阪大学大学院経済学研究科)


原発は、初期投資はかかるが、火力発電に比べ運転すればするほど平均費用が安くなる。 それが耐用年数の長期化につながっているんですね。 



堀場


耐用年数のことやけど、あれは、税務署が決めたもので、格好悪いとか能率が悪くなるとか気にせず、修理して使えば、装置や機械類は何ぼでも使えます。 使う人によるんです。 寿命と一緒です。 


それで原子炉のことですが、あれは、プリミティブで火力発電より簡単なものなんですが、大変なのは問題が出た時どうするかですね。 フランスのサルコジ前大統領は、福島の原発を経験して「マグニチュード7以上でも原子炉はびくともしない。 冷却装置さえちゃんとしていたら大丈夫」とずいぶん自信を持ったといっている。 それにしても福島で無事だった5、6号機とかについて、何で話が出てこないんだろう。 悪いことしか記事にならんのやねマスコミでは。 



高内 章(ストラテジック・ビジネス・インサイツ プリンシパルコンサルタント)


さっきの現場の人間は何でできなかったんだろうという話なんですが、現場の人たちは最初に死ぬのは自分たちで、あれだけの事故も起こるということがわかっていたのに、なぜかれらは海水注入をしなかったのか。 一体何に命をかけていたのかと思うのです。 それは、海水注入で炉を壊しその負担を子孫まで引きずるのがこわかったのか、そこまで組織の圧力が強く壊せない恐ろしさがあったのか、あるいは現場の混乱でパニックが起こったのか。 前半の指摘が正しいなら、ものすごい根深い組織の問題があるんだろうと思います。 



高田


会社にとっての損益が大きく分かれる判断を、現場の人間が下さねばならないというのは非常に苦しいことだと思えます。 そういうことが不要であるシステムを組み立てないと駄目でしょうね。 巨大な地震や津波などが発生したときには、人間が判断を下さなくても、たとえば炉それ自体が自動的に壊れて安全が確保できるようなシステムが組み込まれている必要があるのではないですか。 



山口


オートマチックということですね。 



山極


ヨーロッパでは、科学はどっちかといえば哲学の領域なんですね。 日本の場合は、科学と技術が一体化されていて、技術が先にあり、技術からもたらされる生活のレベルというのが当たり前のようになっている。 でも発想としては本当は逆で、生活レベルが向上するためにはこういう技術が必要、つまり、インフラのコントロールをして理想の生活、社会をつくっていくべきではないか。 どうも日本は人間ではなく、まず、ものありきなんですね。 



堀場


科学と技術に関連していいますと、原子炉はサイエンスと違います。 テクノロジーだけです。 発電機が高いとこにあったとか下に置くかなんて、全くサイエンスではなくテクノロジーの問題なんです。 とにかく、問題が出た今、科学でどうするか。 この原発事故の後、サイエンス的に日本で現在一番大きな問題は、放射線の生理学的な影響だと大変心配しています。 



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