京都大学楽友会館での二回目となる第5回クオリアAGORA2014、今回もおかげさまでとても有意義に開催することができました。これも皆様方のご支援によるものと心から感謝いたしております。
スピーチでは、今世間から注目されているES細胞やiPS細胞など万能幹細胞について、その生命倫理からリスクベネフィットの議論まで、わが国におけるES細胞の父とも称される第一人者、京都大学再生医科学研究所、物質―細胞統合システム拠点設立拠点長の中辻憲夫教授にお越しいただいてお話いただきました。
中辻先生のお話では、先ずこれらの情報で世間一般に伝えられているものはあまりにも誤解が多く、殊にES細胞の生命倫理に関しては誤った認識によって合理的な議論が阻害されている現状をお教えいただきました。
ES細胞の場合、人の受精卵(胚)を使用するため倫理上問題視されておりますが、これらは不妊治療等における人工授精などで不要となったものから生成されます。そして生成された幹細胞は増やす事ができるので受精卵を何度も入手する必要はありません。確かに気持ちの上では(受精の時点で生命と判断するのであれば)簡単に割り切れる問題ではないかもしれません。しかしどちらにしてもこれら不要な受精卵は凍結、最終的には廃棄される対象となってしまいます。
また再生医療につきましても「臓器を無限に再生できる」的な間違った認識からか、人間の生命観について疑問視されていますが、実際にはそんな魔法のようなものではなく、できることは、「目の前の問題に対応する」程度の事だそうです。
「今、目の前に苦しんでいる人がいる。その人には再生医療しか望みはない。そんな人を一人でも多く救う事ができるのであれば... このベネフィットはとても大きなものである事は間違いないのではなかろうか」「その為にはこれらの議論を感情論ではなく合理的に正しく話し合えることこそが私達にとって何より重要なのではないか?」これが今回のスピーチ~ディスカッションでの主題となりました。今まで報道等でしか知らなかった様々な現状をお教えいただき目から鱗の思いです。
そしてもう一つ現実的な問題は、「様々な倫理問題がクリアされたとしてもこれら再生医療は高額医療となってしまい、まだまだ誰もがそれを享受できる環境ではない」という事です。ES細胞やiPS細胞など、わが国にはこんなにも素晴らしい最先端の技術や研究者がいるのに、それを受けるには経済的な高いハードルを越えなければならない。「何とかしてそれを産業と結びつけ、誰もが手が届く医療とするにはどうすれば良いであろうか?」「その際の倫理上の問題はないか?」などをワールドカフェで話し合いました。(詳細は後日ホームページ上にてご報告いたします。)
貴重なお話しをいただきました中辻先生にはこの場を借りまして厚くお礼申し上げさせて頂きます。 ありがとうございました。
クオリアAGORAもいよいよ3年目を迎えました。 今年度のテーマは「京都から挑戦する“新”21世紀づくり」です。 先行きの見えない未来に、私達だからこそできる切り口で果敢に挑戦していければと思います。 これからも変わらぬご支援・ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
≪第5回クオリアAGORA 2014 WEBフォーラム≫
↑をクリックすると該当のクラウドフォーラムを閲覧、またフォーラムへ参加することができます。
※WEBフォーラムへはどなたでもご自由にご参加いただけます。
2014/10/30 (23:30:01)
前の画面に戻る
クオリア京都とは?
人間ひとりひとりの深く高質な感性(クオリア)に価値を置く社会、これは各人の異なる感性や創造性が光の波のように交錯する社会ともいえます。
京都からその実現を図ろうと、各種提言や調査、シンポジウムなどを開催した京都クオリア研究所ですが、2018年に解散したため、㈱ケイアソシエイツがその精神を受け継いで各種事業に取り組んでいくこととなりました。
クオリア社会実現に向けての行動を、この京都から起こしていきませんか?
Get Adobe Reader