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第5回クオリアAGORA/ディスカッション



 


 

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ディスカッション

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ディスカッサント


堀場製作所最高顧問

堀場 雅夫 氏


京都大学大学院農学研究科教授

間籐 徹 氏


佛教大学社会学部教授

高田 公理 氏


京都大学大学院理学研究科教授

山極 寿一 氏



ファシリテーター


同志社大学大学院総合政策科学研究科教授

山口 栄一 氏




山口 栄一(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授)


木村さんから、マグネシウムに関する驚きのお話を聞かせていただきました。 これだけ、マグネシウムが人の健康に影響しているとは、びっくりしました。 それでは、これから、このマグネシウムを豊富に含む海水の可能性について、ビジネスできるのかというようなことでワールドカフェに向けて、テーマを膨らませていきたいと思います。 


私がひとつ思い出すのは、塩害を除くために東北大学教授の中井裕さんが推進していらっしゃる「菜の花プロジェクト」です。 私は、科学技術振興機構のアドバイザーをしていて、そこで支援しているプロジェクトです。 塩害の中で、菜の花が海辺にいっぱい、みごとに育ち、花を咲かせているんです。 海水でも植物、農作物は育ちうるんだ、とわかり、ほんとうに感動しました。 木村さんもきょう、海水と植物のことをお話になっておりましたが、海と植物について、間藤さんにまずうかがってみたいと思います。 



間藤 徹(京都大学農学研究科教授)


私の専門は、植物栄養学といいます、平たくいうと肥料です。 ま、日本の農業がこういう状態ですから、なかなか肥料では研究費ももらえないし、相手にもされない。 そんな中で、私が学んだ高橋英一先生は、「農学部だからといって食べものだけをやる必要はない。 いろんな植物をやってみよう」というお考えで、助手になって最初にやったのは海水利用の研究です。 


先生にいわれた通り、毎日、塩水を植物にかけるのですが、すぐに枯れます。 それを2年ぐらい続けて、さすがにこう枯らしてばかりでは、植物もかわいそうだし、「何か枯れない草ないですかね」と、先生にいったんですね。 すると、先生は、ニタッと笑って「塩田雑草がある」と教えていただきました。 あるんですね、そんな植物が。 


塩田では、粘土の上で塩水を濃縮して鹹水(かんすい)にして、塩を作っていいきます。 そんな濃い海水のところでも平気で育つ植物なんです。 粘土に穴を開け塩水が漏れるので「塩田業の敵」と迷惑がられているのですが、ちゃんと花の咲くいわゆる高等植物です。 それで、「なぜ塩田雑草は塩水に強いのか」をテーマに研究をしました。 


それで、海水はなぜ植物を害するかということなんですが、ひとつは塩濃度が高い、つまり電気伝導度が高いということ、もう一つは浸透圧が高い、この二つで植物は枯れるんですね。 これは、どういうことかというと、漬物を考えていただいたらいい。 例えば白菜の漬物をつくる時、塩を振りますね。 すると浸透圧で水が出ます。 その後、塩濃度が非常に高いですから腐敗菌など普通の微生物は生えず、特定の乳酸菌しか生えない。 漬物ができるというのはつまり、塩害の仕組みを利用しているわけで、逆にいうと、普通の作物は非常に塩害に弱い。 それが当たり前です。 ですから、東北の地震の時、あの海水がまともにかかったら、作物は持ちません。 ただ、先ほど申し上げましたように、特定のニッチに育った植物がいる。 海水利用という今日のお題に沿っていえば、そうした塩があっても生える、あるいは塩がないと調子が悪いという植物をどう産業的に利用していくというのもひとつの方法かなと思います。 



山口


追加の質問なんですが、木村さんが、海水はナトリウムさえ除けば人体にとって理想的なミネラルバランスの水になるとおっしゃいました。 海水からナトリウムだけ抜くという方法はあるんですか。 



間藤


確かに、海水の組成は生命にとって理想的です。 肥料学の立場から見ると海水中のナトリウムはいらないんですが、すべてが揃っていて、ただ、窒素だけがないんですね。 海洋の富栄養化を考えてもらえばわかります。 あれは窒素が原因で、下水とかから窒素-アンモニアや硝酸-がはいってくると、あっという間に生物が増え、赤潮とかで海水汚染が起こる。 で、ナトリウムについてですが、動物にはナトリウムが必要でも、植物にナトリウムはいりません。 それで、何とか海水からナトリウムを抜ければいいのですが、実は、海には、陸から排除されたものがすべていっているということが実際なので、もう一回使うとなると、先ほど申し上げた特殊なニッチに適応したような塩生植物-ハロファイトをいかに利用するかということになるだろうと思います。 菜の花もそうですが、結構薄い塩水ならいくらでも育つ植物はあります。 


しかし、なぜ、そういうものをもっと使わないのかということなんですが、それほどまだ食糧事情が困ってないということだろうと思います。 そのうち切羽詰ってくれば、利用するようになるかもしれません。 



高田 公理(佛教大学社会学部教授)


人間の暮らしに役に立つ有用植物のなかに、塩に強いものはあるんですか。 


間藤


かなり遺伝子の解析は進んでいますし、形質転換で強くなるという例もいろいろ知られています。 しかし、ナトリウムは、カドミウムみたいにクリアではなくボヤーっと効いてくるので、塩に強いと決めている遺伝子はこれ、とはいかないんですね。 おそらく30個ぐらいある。 これをすべてエンハンス、あるいはモディファイしてやれば強いのができると思いますが、基本的に作物というのは早く大きくなってなんぼなんですよ、農学部の立場としては。 だから、海水でイネが生えたとしても、それに粒が3個しか付いていなかったら、生物学的にはイネかもしれないが、農学部的にはイネではないんです。 まあ、そういうところが農学部にはありましてね…。 



堀場 雅夫(堀場製作所最高顧問)


こないだテレビを見ていましたら、石川さんという農水産省の研究所の方のようで、かつてカドミウム禍の時、3、4年かかってカドミウムキラーのイネを作られた人らしいですが、その人が、最近、セシウム137を取り込まないイネを研究しているという話をしていたんです。 そういうことは可能なんですか。 



間藤


ああ、農業環境技術研究所(農環研)の石川覚さんのことですね。 カドミウムの話は非常に面白くて、日本のコメはカドミウムが高いんですね。 ヨーロッパで嫌がられるし、日本人の摂取量も多くなるので、農水省は懸案にしてやっていた。 それで、カドミウムを吸収する遺伝子を探して、ノックアウトしようという構想を立てたんです。 それで、石川さんたちが、組み換えならできるなあという状況になった時、秋田県のお百姓さんが、うちのイネはなんだか、カドミウムを吸わないといってきた。 それで、石川さんたちが遺伝子を調べたら、自然ミュータント(突然変異)で、根っこにあるカドミウムのトランスポーターが潰れていたんです。 


10年研究してなかなか難しかったことが、お百姓さんが見つけた1本のミュータントで解決したんですね。 それで、セシウムもということなんでしょうが、セシウムはどうですかね。 塩をやった私のところにもご相談があるんですが、セシウムは、ナトリウム、カリウムなんかと同族でカドミウムほどバシっと動かないですから…。 まあ、一生懸命トライされて行くと思いますが。 



堀場


それから、もうひとつ聞きたいのは、昆布、ひじきとかワカメなど海の植物は塩辛くないですね。 あれ、ナトリウムはあるんですか。 



間藤


入っていません。 カリウムです。 海藻の体の中にはカリウムがいっぱい入っています。 



堀場


それは、海藻独特の「性能」でナトリウムを取り込まないんですか。 地上の植物とどう違うんですか。 



間藤


おそらく、細胞膜を通して海水は入ってきているはずですが、エネルギーを使ってナトリウムとカリウムを交換しているんだと思います。 それと、もうひとつ、海藻は海の中でのぺっとしていますが、海水の濃度が変動しないので対応できるのだと思います。 



山極 寿一(京都大学大学院理学研究科教授)


ちょっと違う観点から、人間にとって海とは何ぞやということなんですが、木村さんが生命は海から来たとおっしゃった。 それは全くそうなんですが、基本的に哺乳類は海には進出しなかった。 つい最近まで海には出なかった。 海に入ったのは、霊長類では人間だけです。 


しょっぱい涙とか海の哺乳類のように体に毛がないとか、いくつか海にいた条件があるので、もともとヒトは過去のある時期、海にいたんじゃないかという説もあるが、どうもそうではないらしい。 実際、人間の身体は海には適していないようです。 血液に塩分は必要でも細胞は塩分が入ったらダメなようにできている。 少し長く、海の中にいたら皮膚は火脹れのようになります。 


そんなわけで、人間が海に進出したのはようやく6万年ぐらい前、そのころから海の資源を利用し始めたというわけです。 それで今に至るわけですが、まだまだ利用しきっていないということで、海は常温で様々なものを生かしながら貯蔵しておける偉大な「ストックルーム」であるとか、未来の食糧は海に大いなる可能性があるというのは、農水省もいっていることですが、正しいと思います。 


そして、きょうの木村さんのお話であった、海に含まれているある要素を取りだして、陸上で使おうというのは、これができるかどうかですが、びっくりするような革命だと思います。 というのも、進化の過程で、陸上の動植物は海水を利用しなくてもいいようになってきて、海水から身を守るということで陸上での暮らしを維持してきたわけですからね。 それで、海水は陸上動物の由来でもありますから、いろいろ使えるものを含んでいる。 


マグネシウムもそのひとつですが、それを取りだしてうまく利用できるのか。 大きな課題であり、まだ達成できていない問題がいっぱいあると思うんです。 それは陸上の水のようにするのにコストはどのぐらいかかるのか、その問題とそれを使ったとき、何かが飛躍的に伸びるだろうが何かを捨て去らなければならないという、何かネガティブなところはないだろうか。 このことが聞きたいですね。 



木村 美恵子(タケダライフサイエンス・リサーチセンター所長)


私は研究ばかりやってまいりましたので、実用化とか企業化ということは不得手ですが、海のことをやって初めてマグネシウムリッチの飲料水をつくりました。 これは大変有効で、アメフトの学生に、他の飲料水のみでは起こった足の筋痙攣など様々なトラブルもなくなり、全国優勝を果たしました。 飲み物としては多少高価ですが、大量に生産すれば安くできると思います。 


海の資源の実用化としては古くから、苦汁が肥料として使われています。 海のものを結構安価なものとして使われているケースはたくさんあるんじゃないでしょうか。 薬品(酸化マグネシウム)としてマグネシウムを飲むには医師の処方が必要であり、また、食品添加物として許可されていないので酸化マグネシウム添加の食物はありません。 食品添加物として豆腐の凝固剤などに使われている苦汁(主成分:塩化マグネシウム)はそのままでは苦いので添加できません。 しかし、食品に入れて後で焼くと酸化され苦くはなくなりますが…。 サプリメントによる栄養補給栄養のバランスを崩し、却って健康を害することも多々あり、私、あまり好みではないのです。 ミネラルについては、まだ未解のことが多い。 我々も、まだやっと入口というところです。 



山極


海に含まれている成分を取り出すということで、払わなければならないコストはないのかということはどうですか。 


木村


何らかの手を加えて、もう少し大々的にやれば、工夫次第で、コストのかからずにできる方法もあるのではないかと思います。 



高田


1960年前後には海洋開発が盛んだったように思います。 アメリカとソ連の海軍が、それぞれ海中居住のための巨大なプラントを造って実験したんですね。 そうした状況を察知して、学生だったぼくを含む、京都大学の探検部の海洋パーティが、たしか65年に、200万円前後の予算で、水深10㍍の海中に水中テントを張って、そこにできた空間で24時間滞在するという実験をやったわけです。 10メートルでも、海中で24時間を過ごすと、血液に窒素が溶け込むなど、いろいろ厄介な問題が起こります。 それにどう対応するかという実験を、いわばアメリカとソ連の海軍についで世界で三番目に、京大の探検部がやってのけた。 (笑い)今、話せば笑い話みたいに聞こえるかもしれませんが、当時は大まじめ……海洋への関心が非常に高かったわけですが、そうした関心がまもなく宇宙にシフトしてしまう。 なぜ、こういう変化が起こったのか、不思議といえば不思議ですね。 


今ひとつ、私自身がスキューバをはじめ、海に関心を持っていたので、漂流記のようなものを読む機会がありました。 当時の常識では、海で漂流を余儀なくされても、絶対に海水を飲んではいけない、ということが鉄則だったのですが、アラン・ボンバールというフランス人の『実験漂流記』を読むと、「真水が手に入らなかったら、少しずつ海水を飲むほうが生命維持にはいいのだ」という意味のことを書いていました。 


まあ、その後、こうした話を耳にすることはなくなりましたが、極限状態のもとでは、海水をそのまま飲むということもありえなかったわけではなさそうですね。 



山口


先ほど堀場さんから、海藻は塩辛くないという話がありました。 さっきの菜の花も、私も食べたところ、浸透圧に打ち勝ってとてもみずみずしいものでした。 これ、何か海洋利用のヒントに役立てられないでしょうかね。 




間藤


あのう、農学部というのはですね、とれん(収穫できない)と相手にされないんですね。 理学部の人は「いいだろう」というようないい方するんですけど…。 塩生植物やっている時も先生から、二言目には「で、それは食えるんかい」といわれていたんですよ。 正直なところやはり、食糧として考えた場合、収量というものから考えると、塩は避けたほうがいい。 ただ、マージナルなところ例えばサウジアラビアとかなら、別の価値観が働くのでいいのではないかと思います。 


今ちょっと思い出しましたが、メコンデルタは、最近、中国が上の方でダムを作っているもので、海水が上がってきているのですが、そこに結構海水に強いイネがあります。 薄い汽水域ならもつんですね。 アフリカのニジェールにもあって、それはそれで面白いなとおもいますが、できるだけ塩水は避けたほうがよろしいというのが正直なところですね。 





堀場


海水を使うことでなにか問題が起こるのではではないかという山極さんの話と今、お金になるのかならないのかという話を含めて少し話しますと、私のところ、クエートの海水淡水化事業に参加して水質分析やっておりまして、そこでいま大変なことが起こっているんです。 それは、イオン交換膜の性能がだんだん向上してきて、海水から淡水にするのが90%以上にもなって、ということは、十倍以上にものすごく濃縮された海水が排出されているんですね。 これでは、海の生態系が壊れるので大変困っているんですが、私は、これで一儲けできるんではないかと思っているんですよ。 廃棄物として困っている濃い海水をただで日本まで運んでくれたら、ただで処理しましょうと。 どういうことかというと、昔、「子供の科学」で海の水から金が取れるというのが出てましてね、随分興奮した思い出がありますが、これなんです。 水を蒸発させるのにお金がかかるわけですけれど、すでに濃縮されたものが手に入るならその分はコストゼロです。 


木村さんの分析表にも金がありましたね、ものすごく少ないですけど。 レアアース始め地球上に存在する物質でイオン化されるものは全てあるので、うまく分離すれば無限に資源が手に入る。 そうすれば、日本に鉱山なんかいりません。 とにかく海は絶対量が多いですからね、含有量が少なくても問題ではないです。 これ、金儲けとしてどうですか。 



山口


それ、完全にWin-Winですね。 ウラン、リチウム、白金といろいろ含まれていますね。 それ、現地でできないんですか。 



堀場


いや、日本にただで持ってくればというのは冗談で、もちろん現地でやるんです。 既に、濃縮されたやつがあるんやからね。 どうですか、クオリアAGORAのみんなで出資するというのは。 (笑い)



木村


私には、夢があります。 先ほど海水を飲むのがいいのかどうかというお話がありましたが、私は、海水で点滴を作りたいと考えております。 理論的には海水を4倍に薄めればそのまま点滴にできると思っておりますが、医療の液剤として使うには、含まれている成分の有効性を別々に証明することが義務付けられているので、現法規内では不可能ですが、海水の点滴、それが私の最後の夢です。 海水を飲むのがダメではなく、海水原液は濃いのがダメなんです。 真水ばかりでは体力が落ちてきますから、時々、少し海水を飲めば塩分のバランスが取れ、身体にいいということなんだと思います。 



山極


堀場さんがおっしゃたように、海水中の金属が微量でも、絶対量はすごく多いのでそれをうまく取り出す技術さえあれば、これはコストパフォーマンスの問題なんだけど、大いに産業化できる。 それと、先ほど高田さんがおっしゃったなぜ宇宙に向かったかということですが、コストパフォーマンスの問題と領海権という問題があったんじゃないかな。 宇宙は早いもんがちだが、海はギシギシに仕切られていましたからね。 



堀場


でも、海の水は、領海権は関係ない。 大阪湾にも太平洋の水は流れてくる。 



~会場からご意見をいただきましょう~



柴田 一成(京都大学花山天文台台長)


宇宙に行くほうがはるかに簡単なんですよ。 深海に潜る方が難しい。 生物は、海から陸に上がって大進化をしたということなんですが、次は、私は広大な空間の宇宙に行って、生物が大進化をするのではないかと思っています。 



山極


もともと宇宙から来たという説も…。 



柴田


では、ふるさとに戻るということですかね。 



山口


夢のある話が出ましたが、ワールドカフェに向け、ビジネスにできないかということをもう少し話をしたいのですが、資源としての海洋ということで、メタンハイドレートについてどうでしょう。 



間藤


私の知識は、マスコミ情報レベルなんですが、もう試掘は始まっていますね。 ただ、とんでもない値段でしょう。 石油の20倍、30倍ぐらいするでしょう。 



横田 真(京都大学学際融合教育研究センター特別研究員)


元々、経済産業省なんで、海洋開発の話も時々聞き、資源開発の研究会もいろいろあるんですけれども、そこに来ていらっしゃるのは開発する人、いわゆる設備屋さんが中心で、鉱材屋さんはいません。 関係者に聞くと、今の段階では利益が上がらない、ビジネスにならないというんですね。 私は、今は、資源としての開発をやる段階にはないと理解しています。 



山口


メタンはどうですか。 



横田


先ほど間藤さんがおっしゃったような状況だと思います。 技術的なことが検討されている段階と思います。 


所で、きょう間藤さんに聞きたかったことがあるんですが、海藻を育てて大量の食物源とするということは試みられていないんですか、実際難しいんですか。 



間藤


いや、アメリカなんかではジャイアントケルフを使ったバイオマスを盛んに育てています。 しかし、森林と一緒で現存量は結構あるが、海藻も植物なので窒素がないと大きくならないんですね。 日本の場合、温かくて窒素濃度の高い海、例えば、瀬戸内海なんかだと大きなバイオマスをつくることができるのではないかと思います。 



横田


ということは、環境問題の関係がネックになるわけですね。 



間藤


それだけですね。 今の日本は、東京湾がずいぶん水が澄みすぎてアオヤギが住まなくなっているという例もあるので、中国ならいざ知らず、日本ではバイオマスに大きな期待をするのは辛いように思います。 



山口


突拍子もない話題かもしれませんが、黄河の沿岸がものすごく荒れている。 「中原に鹿を追う」という言葉があるくらい豊かなところだったのに、今では黄河の岸辺の土がどんどん海に流されている。 かつて東大の松本聰先生に伺ったところ、中国は、実はこれで渤海湾を自然干拓しようとしている可能性があるということです。 そうすれば、中国全人民の食糧を全てまかなえるそうです。 塩も2,3年で抜けるそうですが、その可能性はあるのでしょうか。 



間藤


100年じゃ足りないですが、いずれそうなると思います。 渤海湾は浅いですからね。 黄河はもう断流がいっぱいおこっているので、渤海まで、土はこないかもしれませんが、意図するとしないに関係なく、結果的に埋まると思います。 



山極


干潟を埋め立てるという話は、あんまり結果だけを予想してやると有明海みたいになるし、干潟の生態系は全くわかっていないんです。 インドネシアなんかでは相当やっているが、かえって漁業資源の枯渇につながってしまう可能性がある。 だから、相当、深慮遠謀がないとうまくペイしていないなという気がしますけどね。 実際、畑にもならないし、住宅地としても地盤が沈下していくということが起こりうるので。 



山口


ありがとうございました。 では、少し休憩をとって、ワールドカフェに移りたいと思います。 木村さん、そしてディスカッサントのみなさん、どうもありがとうございました。 





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