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第9回クオリアAGORA/~沈黙、同調とコミュニケーション~


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様々な場面で人間的なコミュニケーション能力を高めることが求められていますが、コミュニケーションとは果たして何を言うのか? コミュニケーションで意味あるものとは何か? 様々な実例をもとに京都大学こころの未来研究センターの吉川左紀子センター長がスピーチします。

 


 

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第9回クオリアAGORA/無意味なものに意味がある~沈黙・同調・模倣とコミュニケーション/日時:平成25年1月31日(木)16:30~20:00/場所:京都高度技術研究所10F/スピーカー:吉川佐紀子(京都大学こころの未来研究センター長)/【スピーチの概要】熟練のカウンセラーや作業療法士たちが行っている、カウンセリング対話や子どもとの遊びを取り上げて映像分析やテキスト分析を行い、実験心理学のアプローチで研究を行ってきた。 その中で分かってきたのは、「沈黙」「おうむ返しの言葉」「同調」「模倣」のような、特に意味がないようにみえるものが、コミュニケーションを支える重要な要素となっているということである。 簡単なクイズで考えてみる。 以下の対話で、一番怒っているのはB,C,Dのどの人だろうか。 (1)A「怒ってるの?」B「怒ってるよ。 」(2)A「怒ってるの?」C「・・・・怒ってるよ。 」(3)A「怒ってるの?」D「・・・・・」。 映像分析の研究例を手がかりに共感的コミュニケーションの成立する条件や環境について考えてみたい。 /【略歴】北海道生まれ。 1977年、京都大学教育学部卒業、82年、同大学院教育学研究科博士課程修了。 教育学博士。 追手門学院大学助教授、英国ノッティンガム大学客員研究員などを経て、2002年、京都大学大学院教育学研究科教授、07年、同大学こころの未来研究センター設立と同時にセンター長に就任。 専門は認知心理学、認知科学。 著書に「よくわかる認知科学」「顔と心―顔の心理学入門」(いずれも共著)など。  




 


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スピーチ 「無意味なものに意味がある~沈黙・同調・模倣とコミュニケーション」

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京都大学こころの未来研究センター長 吉川 佐紀子氏


京大のこころの未来研究センターで、コミュニケーションにかかわるいろいろな研究をしています。 言いたいこと、伝えたいことを、端的にしっかりと無駄なく表現して伝える―これが効率のいい、よいコミュニケーションだ、というふうなことが私たちの頭の中にはあるように思うのですが、実際に調べてみると、どうもそうではないということがわかってきました。


たとえば、会話の途中の黙っている時間というのは何も伝えていないから無駄な時間だとか、あるいは、相手の表情やしぐさに同調することは、相手と同じことをしているのだから、とくに意味がないように思えます。 ところがそうしたあまり意味のないものの中に、実は、気持ちが通じ合うための大事な何かがありそうだ、という、そういうことをこれからデータをお示ししながらお話したいと思います。



本題に入る前に、少し、自己紹介させていただきます。


私は、認知心理学が専門で、顔の認識や表情の認識を中心とするコミュニケーションのことを調べています。 私が現在所属しているこころの未来研究センターは、2007年に設立されて、脳科学、認知科学、臨床心理学、文化心理学、宗教学、倫理学など、いろいろな専門領域の先生方が集まって、学際研究をしています。 キーワードは「こころ」なのですが、それ以外に「つなぐ」ということも、重要なキーワードになっています。 この写真は、今のセンターのメンバーです。 稲盛財団記念館という建物の2階にある、京都大学では一番小さい研究センターです。


キーワードは「つなぐ」、と言いましたが、センターでは「つなぐ」試みをいろいろやっています。 まず、違う研究領域の間をつないだ研究を積極的にやろうと試みています。 例えば、後でお話する「カウンセリングと実証科学」をつなぐとか、「心理学と脳科学」をつなぐとか、そういう違う研究分野の人たちが一緒になにか研究していく。 それと、もう一つは、基礎研究を社会につなぐという試みをやっています。 センターができてから、大学の外の人たちからセンターに対していろんな問い合わせがあります。 それで始めた研究がいくつかあります。


最近、センターの研究プロジェクトとしてひとつまとまったのは、農業改良普及員の人たちの研究です。 全国に地方公務員として7000人くらいいて、農家の人たちにいろんな知識を提供して、農業をより良くしよう、としている人たちです。 この仕事は、人の心を動かすことと深いかかわりがあるので、自分たちの仕事について心理学の眼で一度研究してもらえないかという依頼があって、社会心理学・文化心理学の観点から「社会資本としての農業改良普及」というテーマで研究を進め、最近本になりました。 また、過去の知、伝統の知と現代をつなぐということで、昨年から、ブータン仏教やブータンの伝統文化の研究も始めています。


それで、きょうのテーマに移りますが、最初のお話は、話を聞く専門家、つまりカウンセラーが話を聞くと、なぜ、クライアントの心を変えていくことができるのか、それを実験心理学の方法を使って調べてみたいということで始めた研究です。


普通、カウンセリングは、週に一度、50分から、1時間、カウンセラーとクライアントの二人が向かい合って対話形式で行います。 研究では、プロのカウンセラーが行う相談と、もう一つ、高校の先生に悩み相談の聞き役になっていただき、同じクライアントの悩みを聞く様子をそれぞれ、ご覧のようなセットの中でVTRに撮り、比較しました。 実際のカウンセリングの収録はできないので、研究協力者の人に、友達の輪に入っていけない、対人・社会不安の持ち主で、大学も休みがち。 その悩みを相談に来る大学生という設定でロールプレイをしてもらいました。


資料画像1資料画像2

 


まず、カウンセラーとクライアントの大学生の間でどういうやりとりがなされたかということを、画面に出ていますが、テキストに起こしてみていきます。


これは、黒い字が相談者で、赤い字が聞き手である高校の先生です。 これ見て、すぐわかるのは、赤字が圧倒的に多い。 つまり、聞き手であるはずの高校の先生がたくさん話しているんですね。 いろんなアドバイスをしながら話を聞いている様子がわかります。 相談者の方は、早い段階から、相談するというよりも聴き手のアドヴァイスに返事をするだけ、という感じになってしまっていることがよくわかると思います。 一方、専門のカウンセラーはどうでしょうか。 出だしのところで言っていることは先生の悩み相談とほとんど変わらないんですけれども、赤い字の量が明らかに少ないということが見て取れると思います。 つまりこちらは、相談者がずっとしゃべっているんですね。 あと、もうひとつ気づいたのは、相談者が話をしている時に、その間に、沈黙が入ることでした。 黙っている結構長い時間ある。 4秒,10秒、12秒…、と、発話の合間の沈黙が非常に長い。 普通、私たちは二人で向かい合ってやりとりをしている時に、相手が黙り込んでしまうという状況があったら、1秒、2秒は待つとしても、10、12秒もじっと相手が次に言葉をつないでいくのを待つことは、ほとんどないんじゃないかと思います。


資料画像3


最初に、聞き手のプロとしてのカウンセラーがどういう聞き方をするのかということをビデオで見直した時、この沈黙時間がものすごく長いというのが、一番顕著に気がついたことでした。 相談者は、ゆっくりゆっくり言葉を紡いでいくんですけれども、プロのカウンセラーはそれを遮ることなく、ずっと待っている。 これが、素人とは全く違う、プロの聞き方なんだとわかってきたわけです。


こういう実験を重ねて、次に、発話の時間を測ってみました。 横軸は時間軸で、ゼロから50分間の流れが見えるようにしています。 どれぐらい沈黙があり、どれだけ話しているか、変化のパターンが分かります。 下の図の、高校の先生の方は、時間が経つごとに、クライアントの話している時間が短くなり、話の間のポーズも短くなっています。 逆に、聞き手である高校の先生がどんどん話していっていることがわかります。 上のカウンセラーの方は反対ですね。 特に、真ん中あたりの時間帯で、相談者の話す時間が増え、沈黙の時間も長くなっていることがわかります。 このように、やりとりの内容ではなく、そのパターンを分析することで、プロの聞き方の特徴が見えてきました。


その次に、映像から、相談しているときの二人の体の動きの量を分析しました。 二人のあいだの体の動きがどれだけ関係し合っているか、同調の具合を調べてみたんです。 それを見ると、相談があまり深まらなかった高校の先生の方は、体の動きはうまく同調していない。 それに比べ、プロのカウンセラーの方は、最初から体の動きが同調していて、中間から以降はさらに同調の程度が深まっています。


カウンセラーは、悩みを聞いてアドバイスをするとか、適切な答えを返すといった聞き方ではなくて、相談者が黙っている時間、沈黙の時間をうまくコミュニケーションの中で使いながら、相談者の深い話を聞き出していることがわかってきました。 それと、コミュニケーションは、単なることばのやりとりではなくて、身体を使ったやりとりなんですね。 言葉がスムーズに出てくるとか、やりとりが素早くできるということではない。 気持ちが通じ合っているとか、やりとりがしやすいとか、そういう気持ちになるには、体全体を使った共感というか、同調が重要なのではないか、ということがこういう分析から見えてきました。 話し手の専有時間とかポーズの長さと、話の深まりとの間にも関係があるようですので、こういった特徴が、質の高いカウンセリングのものさしになるのではないかと思っています。


こういうことを踏まえて、共同研究者といろいろ話しているんですが、人が本当に真剣に、自分の気持ちを相手に伝えようと思った時には、話し始めてすぐではなくて、大体、2、30分ぐらいかかるし、途中の沈黙も長くなるということです。 2、30分して、初めて、自分の一番話したいこと、相手に伝えたいことが出てくる。 それで、通常、lカウンセリングの時間が、45分から50分くらいに設定されていることも、意味があるのではないかと考えるわけですね。 専門家の聞き方の特徴、特に、沈黙の時間が、コミュニケーションにとって重要だということなど、研究でわかってきたことを、学会で報告するんですが、こうした話をすると、プロのカウンセラーの人たちにも喜ばれることが分かって安心しました。 自分たちが普段やっていることが、目に見える形でわかってくるのは、とても面白いというわけです。


このほかにも、対話中の瞬きやあいづちの特徴などについても分析していまして、聴き手のプロならではの特徴がいくつか明らかになってきています。 今回の研究を通して、悩み相談とカウンセリングの聞き方にはずいぶんはっきりした違いがあることに驚きましたし、「沈黙の時間」のもつ意味を改めて考えることになりました。 こういう研究をやってみますと、臨床心理学と実証科学の手法による行動分析という異なる方法論をもつ分野をつなぐことで生まれる、新しい研究領域があるように感じています。



2つめの話題は、「表情」認識のお話です。


この研究テーマは、実験心理学と脳科学がつながって、今、少しずつ面白い展開になってきている領域です。 表情を介した、同調や共感の研究です。 今日は、研究の詳細は省きますが、脳の研究と、行動実験とがどんなふうにつながって、同調や共感の研究になったのか、そのあたりのお話をしたいと思います。 心理学でも、脳科学者と共同して1990年くらいから、MRI(磁気共鳴画像法)という装置を使って、いろいろな課題を行っている時に人間の脳の活動がどうなっているかを調べることができるようになってきました。 たとえば、いろんな表情を見ている時に、脳のどういうところが活性化するのかということを調べてみるわけです。 私たちも、こうした研究を少しずつ始めました。 たとえば、真顔から笑顔や怒りの表情に変化する映像や、静止画の表情、ランダムパターンの動きなどを見ているときの脳活動をみてみると、表情を見ているときに活性化するのはどのあたりかが分かってきます。 その中でとくに注目したのは、変化する表情を見ているときの、運動前野という、ミラーシステムがあると言われる脳部位の活動です。


1990年代に、サルの脳の中で見つかった「ミラーニューロン」という神経細胞があります。 これは、サルが、ヒトや他のサルが物をつまむ動作をするのを見ている時に、自分がその動作をする時に活動するのと同じ脳部位が活動することが発見されて、鏡のような機能をするということで、ミラーニューロンと名付けられました。 人の脳ではミラーニューロンシステムと呼ばれていて、運動前野と、下頭頂葉にあります。


変化する表情を見ている時にも、ミラーニューロンシステムのある部分が活性化するということが分かったので、これは面白い、と。 どうしてかというと、運動前野は、動く準備をするときに活動するわけです。 表情の変化を見ているときにミラーのように運動の準備がされるとしたら、それはどこの動きかというと、見ている人の表情、ではないかと考えました。 もしかすると、変化する表情を見ている人の表情にも、同調した表情の動きがみられるんじゃないかと考えました。 ということで、それを調べる実験をやってみました


この実験に使うのは、テレビ局で使われているプロンプターと同じものです。 下のほうにモニターがついていて、モニターに映った映像がハーフミラーに反射してプロンプターの前に座っている人に見えるようになっています。 後ろ側にはビデオカメラがセットされていて、モニターを見る人の顔を正面から映していますが、見ている人は撮されていることがわからない、という装置です。 これを使って、モニターに映る表情映像を見ているときに、その人の表情がどう変わるかを録画して調べてみました。 すると、ご覧いただいているように、モニターに映る人がまゆをしかめると、それを見ている人も、まゆをしかめます。 また、相手がにっこり笑うと、見ている人の口角がふっと上がるなど、表情が同じように変化することがわかってきました。 つまり、表情の動きを見ている人の表情が変化して、それは見ている表情と同じようになる。 このことは、他人の感情を読み取ろうとする時に、自分自身の感情にシミュレートして理解するような、そういう「共感」の仕組みを私たちのこころは備えているんじゃないか、ということを示していると思います。 共感、というのは、相手の表情を自分の表情に敷きうつすような仕組みで成立している。 しかも、この二人の間に生じる共感は、表情を介して、集団の中のほかのメンバーにも伝わるということが大事だと思います。 つぎに、実際に、二人の人の表情を直接撮影してみたらどうだろうと考えて実験をやってみました。 その映像を見てください。 ここに映っている二人は友達同士で、一人の方にはこういう表情をしてくださいとお願いしており、もうひとりの方には、相手の表情を見て、それがどういう表情で何を伝えたいか、紙に書いてください、と言ってあります。 この受け手の人は、プロンプターで自分の表情を撮影されていることは知りません。


資料画像4


見ていただいたように、受け手の人の表情は、送り手が作った表情に同調していますね。 表情が同調するというのは、相手の気持ちと同じような気持ちになっているということを感じるシグナルになりますし、この様子を見て、二人の間でそういうやりとりが起こっていることを、周りの人たちもわかるのです。 顔の表情が同調して共感が生まれる。 そしてそれは二人の間だけにとどまらず、周りの人にもそれが伝わる仕組みがある。 私たちはこうした同調、共感の仕組みを使ってコミュニケーションしているのです。



さて、最後のお話は、最近始めた「作業療法における専門家の技法」という研究です。


京大病院の作業療法をやっておられる先生と共同で、現在、研究を進めています。 発達障害の子どもさんの支援としての作業療法なんですが、何が作業療法の効果を生み出しているのかを明らかにしたいと考えて研究を始めました。 ビデオを用いた行動解析や、作業療法士の方と子どもさんとのやりとりの言葉を分析するという方法を使って調べていくことで、優れた作業療法が、どういう形で子どもたちを変えていけるのか、あるいは、優れたコミュニケーションの方法としてそれがどう機能しているのかを示せるのではないかと考えています。


現在行っているのは、作業療法士として24年の経験のある先生と、3年の作業療法の経験のある大学院生の人の、作業療法のやりかたの比較です。 中学生の男の子を対象にした作業療法の映像をもとにいろいろな分析を行っています。 ちょっと自閉的な傾向があって、長く作業療法を受けながら通常学級に通っている子どもさんです。 実際の作業療法の場面をみてちょっとびっくりしたのですが、作業療法士と子どもが二人だけではなく、子どもが行う運動や遊びのサポートをするアシスタントの人がいたり、あるいは、お母さんも一緒にその場にいて、ずっと作業療法を見ています。


ちょっと余談ですが、ビデオで撮った映像を見ながら、作業療法士の先生に、このときの発話はどういうつもりで言ったんですか、と聞くと、これはお母さんに対して、子どもは今こういう気持ちなんだ、ということを伝えるために言いましたとか、お母さんが不安そうな様子だったので、大丈夫だということを暗に伝えるために言いました、といわれるんですね。 作業療法の場面をビデオで見ながら、発話の意図を聞いてみると、子どもに話しているようで、実はお母さんに伝えるために言っていることが、すごく多いということがわかってきました。 作業療法士の先生は、子どもとやりとりをしていますが、そのときに、同時にお母さんの存在にもしっかり注意を払っているんです。 ビデオを見ていると、ああここで二人の間でこんな話が行なわれているなあ、とか、ああこういう場面なんだなと、簡単にわかったような気になるんですが、実は、そこで流れているこころの動きというのはとても複雑で、そう簡単にはわからないんですね。


さて作業療法の様子をVTRで録画した後、作業療法士の人の言葉を全部記録して、分類するということをやりました。 そうすると、さまざまな機能を持った言葉を使って、子どもの行動を誘導していることがわかってきました。 計画要求、疑問、実況中継のようなこと、合図、感動表出、雰囲気作りの言葉等々、作業療法士はいろんな言葉を使うんですね。 子どもの行動をうまく引き出すように、自分の状況を知らせ、次には何をしたらいいか分かりやすくするとか、その場を和ませるなどいろんな言葉かけを行ってやっています。 それで、どういう言葉をどれぐらいの数で行っているか分析して経験の豊富な熟達者と、非熟達者を比較しますと、熟練の作業療法士は、雰囲気作りの言葉を非常にたくさん使ってみたり、実況する言葉や、合図、感情表出の言葉もよく使っています。 一方、非熟達者の方は何が多いかというと、ああしよう、こうしようという誘導や、子どもに対する問いかけがすごく多いことがわかってきました。


つまり、熟達者は、子どもにこれから何をしたいかを考えさせたり、それをサポートするように実況したり、合図をしたりする。 これはお母さんを多分に意識した言葉かけでもあります。 そして一連の運動や遊びが終わったら、振り返ったり、それに対する自分の感情を表現したり、その合間に、雰囲気作りのちょっと笑わせるような言葉を発したり、その場にいる人、全員が楽しめる雰囲気を、いろんな言葉をかけて作り出しているのです。


この研究はまだ始まったばかりですが、作業療法というのは、単に、子どもの運動機能を高めているだけではないんですね。 作業療法士の人は、絶えず子どもとコミュニケーションをとりながら、子ども自身が自分の状態に意識を向ける力を高めるとか、あるいは、ほかの人との気持ちを伝え合って、情動的な関わりを促進するような言葉かけをしています。 こうした作業療法士の人たちの持っているスキルは、実証的な分析を通して、教育場面一般に活用されるように広めていくことができるのではないか、と考えています。


以上、三つのお話をしましたが、あらためて、これまでやってきた研究で分かってきたことをまとめると、カウンセラーや作業療法士といったコミュニケーションのプロフェッショナルは、相談者や障害児の自分のこころの表現を、一番いい形で引き出すコミュニケーションのスキルを持っているということでした。 そのときのやりとりにとって大切なのが、沈黙であったり同調や模倣、そして共感といった要素なんです。 これは、今まで何となく無駄のように思われていたり、あまり重要だと思われてこなかった要素です。 しかし実はとても大事なものらしい、ということが少しずつ見えてきました。


繰り返しになりますが、人と人のコミュニケーションは、役に立つ情報をできるだけ効率的に伝達するという、そういう性質のものではない。 そういうやりとりもあるかもしれないけれど、日常的なやり取り、あるいは、なにか問題を抱えた時に必要になるコミュニケーションでは、安心できる快適な場があって、その中で、同調してくれる他者、自分の心を受けとめてくれる他者がいて、ゆっくり時間をかけてやりとりする、こういうことがとても大切なんじゃないかということですね。 そして、他者としっかり対面をし、身体全体を含むやり取りをすること。


最近の私たちのコミュニケーションでは、携帯やEメールでのやりとりが中心になっていて、対面することとか身体というものの重みが少しずつ失われてきています。 私たちの研究結果が示すように、また、作業療法士やカウンセラーのお話を聞いていてもそうなのですが、こういう要素が、人間のこころを育て、こころの問題を解決するときにはとても大事であることがわかってきたように思います。 こうした基礎研究の成果を、これからの専門家の教育や、日常のコミュニケーションの中にも生かしていけないかと考えています。


人は、一生の間、コミュニケーションをやめることはありません。 そして、今、とてもコミュニケーションが難しくなっている状況があるとすれば、どこに問題があるか、なぜ難しくなっているかを調べて、どうすればよいかを考える必要があります。 カウンセラーは対話というコミュニケーションによってクライエントのこころを変化させますし、作業療法士は身体を使ったコミュニケーションを通して、子供たちの生きる力を回復させる人たちです。 このような、専門家の人たちの持っているスキルは、とても参考になると思っています。 私たちの行っているコミュニケーション研究は、こうした専門家のスキルを具体的に取り出して、専門家でない人たちにとっても役立てられるようにする仕事と考えて、取り組んでいます。



≪吉川佐紀子氏スピーチの資料ダウンロード(PDF:2.71 MB )≫



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